VS クレープ屋
会社の近くの駅に移動式の(車で来るやつ)クレープ屋さんが来るようになった。
俺は甘いものも辛い物も、中途半端な味付けのものも、みんな好きである。
嫌いな食べ物は量の少ない物です。
量の多い店は素通りする訳にはいかない。
それは、自分の人生をも否定する事になるからだ。 へー、そう。
そこで買った客なのだろう。大きなクレープをモゴモゴさせながら歩いてる人達が、そこかしこにいる。
大きなクレープである。
大きな。
しかし、クレープである。恐らく男女カップルが愛を確認しつつ食べるのだろう。
俺のような無頼が一人で並んで買っていたら、その店から客が居なくなってしまうかも知れぬ。
同僚のサックン監督を誘った。
数秒後、人選を間違えた事に気づく。サックンはチェ•ゲバラを彷彿とさせる風貌だ。
そして俺は襟の伸びたTシャツにハーフパンツに裸足にサンダルという、まさにバンカラ野郎。
その光景は、アホテロリスト二人が 、町の人気者のクレープ屋を爆破するために並んでいるようだった。
俺の注文の番になり、「フルーツミックス生クリーム」を頼んだ。
さらにトッピングで、「あのー、生クリームもう一つ追加で」
俺は生クリームの上に更に生クリームを乗せようとしたのだ。
すると、店のお兄ちゃんはニヤッと笑い
「じゃあ、生クリームはサービスしますよ」と言ってくれた。
恐らくお兄ちゃんは、「お前、分かってるじゃねえか」と、心の中で思ってくれたのだろう。
違いの分かる者同士の出会い。 これほどアツイものは無い。
深く言葉を交わさなくても、そこに信頼が生まれるのだ。
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